小間切れ(こま切れ)肉カロリー等の考察
庶民の味方である小間切れ肉ですが、様々な部位を含むため、特定の部位肉のように推定カロリー等が日本食品標準成分表にも掲載されていません*1。「小間切れ カロリー」で検索すると豚・牛で 100gあたり200〜300kcal、たんぱく質20g弱 のような情報がいくつか出てきますが、これは多くのダイエッターやトレーニーが愛用する鶏肉(皮なし胸 or ささみ)の 100gあたり 100〜120 kcal、たんぱく質25g弱 と比較すると倍程度のカロリーであり、上記数値が正しいならば体作り的には手が出しにくくなります。もちろん豚・牛でもヒレ肉など脂身の少ない部位であれば選択肢に入ることは分かりますが、こちらは価格的に手が出しにくいという悲しい問題があります。
しかし、実際に脂身の少ない小間切れ肉を調理していると、油がそれほど出るわけでもなく、本当に 100gあたり200〜300kcal は妥当な推測なのか疑問に感じました。そこで日本食品標準成分表に基づいて小間切れ肉のカロリーを脂身つき肉の割合別で考察しました。筆者の結論としては、脂身のかなり少ない小間切れ肉を選べば豚・牛ともに 100gあたり 約120〜140kcal、たんぱく質約20g でダイエット等の際にも十分選択肢になると考えます。
日本食品標準成分表における赤肉や脂身などの定義
日本食品標準成分表2020年版(八訂)における赤肉や脂身などの定義を図にすると以下のとおりです。豚ロース肉がイメージしやすいと思います。日本食品標準成分表2020年版(八訂)を参照するならば421ページの図を参照してください。
ポイントは筋繊維間の脂肪組織(いわゆる「さし」)は赤肉の一部として扱われるということです。このため、ばら肉の切り落としのように明らかに大きな脂身(日本食品標準成分表では皮下脂肪・筋間脂肪の厚さを5mmとしているため、5mmが一つの目安)がついていなければ赤肉になります。だからこそ赤肉なのに脂質がある程度計上されているわけです。
この定義に従って考えて、以下の2枚の写真例*2は脂身も見えていますが、ばら肉の切り落としが含まれているわけではなく、「さし」の範疇程度の脂身と考えて筆者は赤肉100%・脂身つき肉0%と判断します。安全を見るなら脂身つき肉10%と考えてもよいと思います。
小間切れ肉の脂身つき肉割合別カロリー、タンパク質、脂質
小間切れ肉内の脂身つき肉(ばら肉、大きめの脂身がついている肉など)の割合別カロリー、タンパク質、脂質を日本食品標準成分表2020年版(八訂)に基づいて推定しました。細かい算出根拠は後述しますのでご興味のある方はご参照ください。
豚小間切れ肉100gあたり
脂身つき肉の割合 | カロリー[kcal] | たんぱく質[g] | 脂質[g] |
---|---|---|---|
100% | 366 | 14.4 | 35.4 |
90% | 341 | 15.1 | 32.2 |
80% | 316 | 15.8 | 29.1 |
70% | 291 | 16.5 | 25.9 |
60% | 266 | 17.2 | 22.7 |
50% | 241 | 18.0 | 19.5 |
40% | 216 | 18.7 | 16.4 |
30% | 191 | 19.4 | 13.2 |
20% | 166 | 20.1 | 10.0 |
10% | 141 | 20.8 | 6.9 |
0% | 117 | 21.5 | 3.7 |
※ 日本食品標準成分表2020年版(八訂)から出典、四捨五入
※ 大型種肉の「かた赤肉」・「もも赤肉」・「ばら脂身つき」で構成されるものとし、脂身つき肉は全て「ばら脂身つき」とし、残りは「かた赤肉」と「もも赤肉」が1:1とする
※ 「ばら脂身つき」は他のどの部位の脂身つき肉より高カロリーのため、安全を見て脂身つき肉は全て「ばら脂身つき」としており、実際はもう少し低カロリー・高たんぱく質・低脂質になる可能性も考えられます
※ 「かた赤肉」、「もも赤肉」のカロリー・たんぱく質・脂質はほぼ等しいため割合が崩れてもほぼ値は変わらない
輸入牛小間切れ肉100gあたり
脂身つき肉の割合 | カロリー[kcal] | たんぱく質[g] | 脂質[g] |
---|---|---|---|
100% | 338 | 14.4 | 32.9 |
90% | 316 | 15.0 | 30.1 |
80% | 293 | 15.6 | 27.2 |
70% | 271 | 16.2 | 24.4 |
60% | 248 | 16.8 | 21.6 |
50% | 226 | 17.4 | 18.8 |
40% | 204 | 18.0 | 15.9 |
30% | 181 | 18.6 | 13.1 |
20% | 159 | 19.2 | 10.3 |
10% | 136 | 19.8 | 7.4 |
0% | 114 | 20.4 | 4.6 |
※ 日本食品標準成分表2020年版(八訂)から出典、四捨五入
※ 輸入牛肉の「かた赤肉」・「ばら脂身つき」で構成されるものとし、脂身つき肉は全て「ばら脂身つき」とし、残りは「かた赤肉」とする
※ 「ばら脂身つき」は他のどの部位の脂身つき肉より高カロリーのため、安全を見て脂身つき肉は全て「ばら脂身つき」としており、実際はもう少し低カロリー・高たんぱく質・低脂質になる可能性も考えられます
※ 日本食品標準成分表の記載に基づき牛肉についてはかた肉での構成としたが、カロリー・たんぱく質・脂質がほぼ等しいため、もも肉が含まれてもほぼ値は変わらない
まとめ
鶏肉(皮なし胸 or ささみ)の 100gあたり 100〜120 kcal、たんぱく質25g弱 かつ低価格には及びませんが、脂身のかなり少ない小間切れ肉を選べば豚・牛ともに 100gあたり 約120〜140kcal程度、たんぱく質約20g ですので、ダイエット等の際にも選択肢にはなります。特に豚小間切れ肉は半額シールが貼られれば鶏肉よりも低価格になる場合もあるため、私自身も今後はチェックしようと思います。かた肉・もも肉がセールなどで多く切り出される日が狙い目になりそうです。
ダイエット時の主なたんぱく質摂取源は価格と低カロリー・高たんぱく質・低脂質の点で鶏肉(皮なし胸 or ささみ)が基本にはなってしまいますが、少し食事を変えたい時の選択肢が増えたのは嬉しい限りです。ダイエッターやトレーニーの参考になれば幸いです。
なお、今回の考察に際しては文部科学省が公開している日本食品標準成分表2020年版(八訂)を参照しました。ネット検索で出てくる情報は根拠が不明な場合や2015年版を参照している場合もありますので、国が公開している最新資料を参照するのが一番です。ただ、上記で公開されているファイルから検索するのは使い勝手が悪いため、文部科学省の外部サイト食品成分データベースを活用することを強くお勧めします。カロリー・たんぱく質・脂質・炭水化物だけでなくビタミン各種など多様な成分表示や含有量のランキング表示、複数食品を組み合わせた場合の成分表示もできて非常に有用です。ただ、今回のように「脂肪つき」、「皮下脂肪なし」、「赤肉」などの表示が何を意味しているのかを別途調べる必要がある場合があったり、使いこなすまでに多少時間がかかりそうではあります。
【参考】算出根拠
各種カロリー・たんぱく質・脂質
今回の算出に用いた各部位+αの100gあたりカロリー等は以下のとおりです。豚肉は全て大型種肉・生肉、牛肉は全て輸入牛肉・生肉です。
部位名 | カロリー[kcal] | たんぱく質[g] | 脂質[g] |
---|---|---|---|
豚かた赤肉 | 114 | 20.9 | 3.8 |
豚もも赤肉 | 119 | 22.1 | 3.6 |
豚ばら脂身つき | 366 | 14.4 | 35.4 |
牛かた赤肉 | 114 | 20.4 | 4.6 |
牛もも赤肉 | 117 | 21.2 | 4.3 |
牛ばら脂身つき | 338 | 14.4 | 32.9 |
※ 日本食品標準成分表2020年版(八訂)から出典
算出式
前述のカロリー等に基づいて、今回は以下のように算出いたしました。脂身つき肉の割合(0.0〜1.0)をxとしています。なお、表示桁数以下は四捨五入です。
豚小間切れ肉
カロリー:[かた赤肉]+[もも赤肉]+[ばら脂身つき]
= 114*(1.0-x)/2 + 119*(1.0-x)/2 + 366*x
たんぱく質:[かた赤肉]+[もも赤肉]+[ばら脂身つき]
= 20.9*(1.0-x)/2 + 22.1*(1.0-x)/2 + 14.4*x
脂質:[かた赤肉]+[もも赤肉]+[ばら脂身つき]
= 3.8*(1.0-x)/2 + 3.6*(1.0-x)/2 + 35.4*x
輸入牛小間切れ肉
カロリー:[かた赤肉]+[ばら脂身つき]
= 114*(1.0-x) + 338*x
たんぱく質:[かた赤肉]+[ばら脂身つき]
= 20.4*(1.0-x) + 14.4*x
脂質:[かた赤肉]+[ばら脂身つき]
= 4.6*(1.0-x) + 32.9*x
小間切れ肉と切り落とし肉
今回は小間切れ肉を対象としましたが、類似のものとして切り落とし肉があります。小間切れ肉は様々な部位を含むのに対して切り落とし肉は基本的に特定部位のみになるため、対象部位のカロリー等を参照するとより正確です。脂身のつき方に応じて「脂身つき」・「皮下脂肪なし」・「赤肉」を参照してください。